さて、シナリオです。 シナリオ自体はシンプルなハックアンドスラッシュです。 舞台は日本帝国関西スプロール三ノ宮。 ヤマト運輸関西支社長の藤原から連絡が入ります。 ちなみに、このヤマト運輸と関西スプロール三ノ宮の設定は昔勢いででっちあげたものです。 初心者に対しても抵抗感の少ないシャドウランを、と思いまして。 いや、本当ですよ? 依頼はヤマト運輸の精鋭部隊たる背負い子スタッフが消息をたったため大至急捜査してほしいというもの。 背負子スタッフは三木から天然の山田錦を灘の酒蔵に運ぶ仕事を受けていたらしい。 伊勢神宮に奉納する神前酒を造るために必須の貴重なものらしい。 PCはヤマト運輸さんの依頼ならと仕事を引き受ける。 背負子スタッフの山田さんは三ノ宮近郊の六甲山中で通信が途絶し未だに復帰していない。現場まではヤマト運輸がナビをしてくれるといたれりつくせり。 現場では、銃撃戦の後があり10人程の相手に待ち伏せを受け、猛射を受けた模様。 ここで10人と聞いたプレイヤーは非常に嫌そうな顔をしていましたが手練れは二人と聞いて一安心の様子。 出血状況から恐らく山田さんは生存していると推測できた。 足跡を見ると彼らは三ノ宮を目指して下山している。 PCは下山後近くにあったカメラをハッキングし襲撃時間近くに通過した車両を洗うことに。 平行して依頼主に中間報告を。その際犯人の心当たりを聞くとあっさりと佐川急便の仕業ではないかと。 爆笑しながら、判っているなら速く教えろと文句を言う一堂にしれっと確証はありませんよ、と返す藤原。 そして、カメラには佐川急便のトラックが。 行き先を追跡してみると佐川急便の神戸支社に入っていった模様。 ここでハッカーがひとあたり神戸支社にハッキングを仕掛けることにしました。 ただ、セキュリティーハッカーのダイスが炸裂し、18個ふって14個成功、ハッカーのデッキは反撃で壊れかけになります。 5thではハッカーに失敗するとダメージを受けるようになりました。 そして、遠方から響くはパトカーのサイレンの音。 そういえば、神戸の治安を守る株式会社神戸市警は日本帝国軍の傷病兵など退役軍人をかなり受け入れており、非常に練度が高いと言うのを説明し忘れていました。 ジャックアウトして一目散に逃げ出す一堂。 一回失敗しただけで本当に居場所はばれるのかしら。要再確認ですね。 ハッキングは厳しいと言うことで足で情報を探すことになります。 コネのタリスモンガーにダウジングをしてもらうとか色々アイデアは出ましたが無難に三合会のチャンに佐川の隠し倉庫について尋ねることに。 本人は知らなかったものの場所の確認は取れ、ポートアイランドの物流倉庫にある存在しないことになっている倉庫と長田にある廃屋のはずなのによく狭川関係者が出入りしている倉庫の所在を教えてもらう。 楽そうだと言うことで先に長田の倉庫を見に行きます。 ここはセキュリティーハッカーが自分のデッキで警備システムを構築しておりスレイブ化している状態でした。 とりあえず、カメラシステムにマークをつけカメラ画像を洗います。 結果、内部に10人程度とえらくサスペンションが沈み込んだバンがあります。 ここでコンバットメイジがアストラル投射で偵察に向かいます。これにより、バンに瀕死のサムライがいることが確認されます。 ひとまず、目標確認と言うことでPC達はプランをたてます。 車庫のシャッターを空け、バンの鍵を空け、エンジンを直結してバンに乗って逃げる。 そして、このチームで上記ができるのはハッカーだけのためカウチポテトの引きこもりハッカーははれて現場に突入することになりました。 なりすまし行動でシャッターを空け突入する一堂。 不審に思い様子を見にきた佐川のセキュリティーと銃撃戦が開始されます。 ただ、佐川側は逐次兵員増強した関係でPC側が終始優位に戦闘を展開します。 結果的にバンを改造している間にセキュリティースタッフは制圧されPCはゆうゆうとバンを強奪。 そして、無事に背負子スタッフと山田錦を奪回しました。 シナリオ自体はシンプルな組み立てなので問題ありませんでした。 やはり、戦闘とハッキング関係のルール把握が不足しておりテンポを欠いたセッション展開となりました。 この辺りのレジュメ整備とキャラクターシートの作成が急務になりそうです。 まあ、そもそも5thに移行するとは確定していないわけですが(笑) おまけ 2070年 日本帝国(JIS)神戸スプロール JISでトップシェアを誇る運輸会社ヤマト運輸。 治安の悪化に伴い様々な運輸会社が撤退を繰り返す中ヤマト運輸は防衛力の強化によりサービスを維持し、現在ではヤマト運輸は高額な運送費に見合う確実なサービスを提供するという 評価を確立している。 しかしながら、数年前よりこれを利用しフェイクの機密情報や機密品をヤマト運輸を使用して送付しているとライバル企業にわざとリークするという手段をヤカシマが行い始めた。 この結果ヤマト運輸の物流部隊及び高脅威対応チームはメガコーポの特殊部隊やランナーチームとの無数の戦闘を強要されかなりの損耗を強いられた。 これに業を煮やしたヤマト運輸の執行部はこれを威力業務妨害として企業法廷に提訴した。 これには最近暗躍の目立つヤカシマを企業法廷が叩くだろうという読みと共に様々な証言による状況証拠とヤカシマもしくはそのカバーカンパニーの荷物運搬時の襲撃といった統計デー タに裏付けされたものだった。 この提訴は取り上げられ判決に向けて最後の資料整理を行っている時期にそれは起きた。 最初はちょっとした異常だった。幾ばくかの通信トラフィックが増大し、通行人が増えた。 続いて交通量が減り、配達に出ている配達員から予定に無い交通規制の情報が入り始め、突然全ての通信が途絶された。 その瞬間、通行人は突然銃を抜き、神戸スプロールにあるヤマト運輸関西統括オフィスに殺到した。 完璧に計画された襲撃。 これが並のオフィスビルであれば、襲撃者は15分で目的を達成し悠々と撤退したことだろう。 だが、ヤマト運輸関西統括オフィスは普通のオフィスビルではなかった。 この上なく強固に警護が施されたビルであった。 かくして互いが血で1秒を奪い合うような銃撃戦が開始された。 通常であれば完全な連携を持った襲撃チームが通信を途絶させられた警備チームを制圧するはずであった。 ヤマト運輸関西統括支社オペレータールーム 襲撃によりオペレータールームはパニックに襲われていた。 主にクレーム対応を行うための部隊であり、柔らかな人当たりや麗しい外見が選考基準である部署である。 知識としてはスタッフが戦闘を辞さないとは知っていても感覚的には別世界の出来事である。 ただ、その別世界とは地続きのお隣だったと突然知らしめられたのだ。 藤原清美もそんな人当たりの良さで選ばれたオペレーターだった。 彼女は通信が途絶した際に最初に思ったのはクレーム対応中でなくて良かったと言う素朴な感想だった。 だが、全ラインが途絶し自らのコムリンクがオフラインを表示するにいたり、これがちょっとしたトラブルではないと頭の中で警報が鳴り響いた。 「当社は緊急時には15分以内に高度脅威対策チームが現場に駆けつける体制を整えておりまして、現場の警備スタッフはこの時間を死守するように訓練されております。ですので、仮に 10大メガコーポの襲撃を受けたとしてもお客様のお荷物はお届け先にお持ちできると自負しています」 クレーム対応の決まり文句が頭の中をぐるぐる回る。 すぐに助けが来るから何もしなくていいわと言う現実逃避と、助けは来るさ、だがいつから数えて15分後だいと言う冷めた思考がせめぎ合う。 人は自分が決めたルールを破られると脆いものです。そんな自己啓発セミナーで聞いた言葉が頭にこだまする。 藤原は何も考えずに全館放送のスイッチを入れた。これは昔ながらの有線式の放送設備だ。これを破壊するにはビルを破壊する必要がある。 「わたくしオペレータールームの藤原清美でございます。皆様に緊急放送をさせて頂きます」 明るく悩みが無く日常の幸せを彷彿させるような美声が館内に鳴り響く。 「現在ヤマト運輸関西統括支社は謎の勢力、ヤカシマ(仮)の襲撃を受けております」 迷子のアナウンスでもするように淀みなく言葉を紡ぐ。 パニックに襲われた者、必死の防戦を繰り広げる者、襲撃者達、皆等しく耳を傾けた。彼女は何を言っているのだ、と。 「現在外部との通信は完全に途絶しています。そして、周到な襲撃計画から推測するに外部には偽の通信が行われていると思われます」 苛烈な銃撃戦の最中に場違いな美声が響き渡る。 「本社のスタッフは優秀です。緊急事態だと認定するまでに最悪でも30分、全ての緊急対策チームが出撃した直後として更に30分、計1時間。これが最悪でも増援が来るタイミングです」 ある者は呻き、ある者は困惑し、ある者は落ち着きを取り戻した。 「ですので、標準のプロトコルである15分間の防衛戦は忘れてください」 襲撃者達は慌ててスピーカーを探す。 この脳天気な女性が統制の取れない警備部隊の統制を取るつもりであると気づいたのだ。 「敵の狙いはデータベースサーバーです。各スタッフはサーバーの物理的隔離とデータ保存プロセスを進行してください」 その言葉で後方処理部門は自分の仕事を思い出し走り始める。 「それでは皆さん無事生き残り会社から危険手当てをせしめましょう。私も欲しいバッグがありますのでできる限りのことをしたいと思います」 これは大したことではありませんよ、と言った気楽な口調に緊張がほどけ更にスタッフが動き出す。 「以上、皆様のオペレータールームより藤原清美の館内放送でした」 ふと、藤原はオペレーター達の視線が自分に集まっていることに気がつく。 当然である。1オペレーターが襲撃中のビルで全体命令を下してしまったのだ。 「えっと」 何か言い訳をしようとする藤原。それを制して口を開く上司。 「名演説だったわね。多分だけどあなたのお陰でみんなオペレータールームと各部屋を繋ぐ回線があるのを思い出してしまったわ」 「つまり?」 「ここが文字通りオペレーションルームになったってことよ。責任持って指揮しなさい、藤原」 無駄に頭の後ろで束ねた髪をいじる。 「まあ、やることが無いより良いですかね」 呟きながらも髪をくるくる回す。 そして、自分のコムリンクを普段はクレーム対応数などが表示される大スクリーンに繋ぐ。 館内地図を表示しながら再度全館放送のスイッチを入れる。 「オペレーションルームの藤原でございます。私どものオペレーションルームが現状全体指揮室に最も近い状況にございます。私ども指揮の経験はございませんが、皆様のご要望に対応 させていただくのは慣れております。ご要望頂けますと全館に周知徹底させて頂きます。お気軽に御要望をお申し付け頂けますと幸いでございます」 ヤマト運輸のスタッフは苦笑した。自分たちの命がけの攻防もクレーム対応に過ぎないのかと。 否、たかだかクレーム対応に命をかけても仕方在るまい本社の高度脅威チームの到来まで時間を稼ぐべきなのだと気づいた。 これにより決死の防衛線を構築しようとしていたスタッフは後退し隔壁を閉鎖した。 あるスタッフは3つあるデータサーバーのバックアップリンクを切り、1つを死守できる姿勢を調えた。 言わば、攻撃側の勝利目標は上がり、防衛側の作業は変わらない。 襲撃側にとって藤原の声は悪魔の囁きであり、守備側には天恵であった。 そして、無限にも感じられる1時間が経過した時点で襲撃側は1階を制圧するに留まり、ヤマト運輸のスワットチームと警備部隊による挟撃を受け壊滅した。 一部の生き残りの証言は貴重な証拠となった。 そして、死守されたデータと証言により企業法廷はヤマト運輸の要求した賠償請求を認め、ヤカシマに支払いを命じた。 法廷戦は完勝であった。 それと並行して藤原清美の処遇が議論された。 彼女のおかげで関西支社の被害が軽微で済んだのは間違いない。 だが、それは結果論であり越権行為で社員を危機に陥れたとも言える。 上司の川崎からは危機管理プロトコルに従い、自分の指示のもとの指揮であり何ら問題は無いはずであるとの上申も上がっていた。 更に現場スタッフからの熱烈な、脅迫まがいの藤原清美擁護の書類が殺到した。 この状況からヤマト運輸取締役会はユニークな決定を下した。 越権行為による減棒。1年間の間給与を半分とした。 そして、藤原清美を関西支社長に任命した。そのカリスマ性を信頼した博打のような人事だ。 結果、彼女の給与は10倍となった。 それから5年、この人事がジャックポットであったと皆が気づき始めている。 ヤマト運輸 日本のAクラスメガコーポ。 日本を中心にアジア圏でシェアを伸ばしており、近年AAクラスになるのではないかと噂されている。 単純な市場シェアで言えば飛び抜けているわけではないが、その売上と収益率は郡を抜いている。 この理由としてヤマト運輸が万全のセキュリティーによる確実な輸送を謳い文句に金額によらない商売を展開し成功してきたことが上げられる。 ヤマト運輸は都市間の治安悪化に対して民間保障警備会社の資格を取得し自らの防衛力を底上げしたことが現在の礎を築いたと考えられている。 当初は他企業の退役軍人などを中心に整備されたセキュリティーチームも現在は質量共に充実し、実際の都市間輸送トラックを警備するリガーとハッカーを中心とした警備チームは実戦 経験も豊富で防御車両を駆使した簡易防衛陣地を展開すれば、レンラクのレッドサムライやシアワセの神の武士とも対等に渡り合えると言われています。 また、営業エリアを緊急ジェットで10分以内にSWAT部隊を投入できるかを基準に分割しており、輸送トラックが襲撃を受けた場合、直ちに投入できる体制が整えられている。 また、以前AAメガコーポヤカシマとの抗争により関西支社が甚大な損害を受けたことを教訓として黒猫忍軍と呼ばれる諜報部隊を要している。 彼らは信頼できるランナーチームの名簿を独自に整えており明確に襲撃が予想されたり緊急対策などでランナーを雇うことがあります。 ランナーの仕事としては珍しく合法的な仕事が多く、多くの場合は任務中に使用するための限定企業SINが発行されます。 組織構成 ヤマト運輸は三部門から構成されており、それは配達、長距離輸送、後方支援です。 配達部門 配達部門は都市部まで輸送された荷物を配達先に届ける部門です。 基本的にツーマンセルを基本として市民レベルで合法的な武装を身につけています。 通常は一方はボディガードの訓練を受けており最悪の場合でも1人で荷物を届けるように徹底されています。 もう一方も一般的な軍隊訓練を受けています。 ※特殊輸送部隊としてデルタグレードのサイバーウェアに身を包み車両が入れないような場所に背負子を背負い荷物を届ける背負子部隊も居る。 長距離輸送部門 治安の悪い非都市部を輸送する精鋭部門です。 通常はリガーとハッカーの指揮官2人と複数のサムライや魔法使いで構成されたチームで輸送を担います。 特筆すべきは荷物の保全を最優先しており、襲撃を受けた場合は防御車両を駆使した簡易防衛陣地を構築しスワットの到着を待ちます。 しかしながら、輸送トラックと最低2機の防衛車両搭載の最低3門のオートキヤノンと射撃の腕前、アルファグレードのインプラントは並みの強盗団で打ち破れるものではなく、最近は襲 撃を受けることも減っています。 後方支援部門 緊急配備されるスワット部隊と事務スタッフ、諜報部隊で構成される部門です。 事務部門の部署長は必ずハッカーが配置され、通常はバックアップに複数のハッカーが配置されます。 必要であれば電子戦を仕掛けることも想定されています。 スワット部隊は重火器による仮借無き火力による攻撃を前提とした部隊です。輸送機の操縦は電子戦に長けたリガーが行い現地到着後は長距離輸送部門の指揮下に組み込まれます。 諜報部隊である通称黒猫忍軍は様々な場所で受付業務を行う担当者や物資や資金の動きを追うコンサルタント、主婦の傍ら情報提供する草などで構成されており、的確な防衛計画の立案 の中心存在です。 藤原清美 「ヤマト運輸の藤原清美でございます。皆様に依頼がありお電話差し上げました」 ヤマト運輸関西支社長。 元クレーム対応オペレーターながら、過去の関西支社襲撃事件の際に一般社員を叱咤激励し、見事に支社のホストコンピューターとお客様の荷物を守り抜いたことで大抜擢された人物。 関西のブラックオプ全てを統括しており、関西スプロールでは彼女からの直通連絡を貰えるようになれば一流の証とも言われている。 関西支社襲撃事件(通称:黒猫抗争) ヤマト運輸とヤカシマの抗争事件。 ことの発端はヤカシマがヤマト運輸の輸送能力に目をつけ意図的に囮や他メガコーポに狙われそうな荷物を依頼した上で敵対企業にその情報を流したことです。 これによりヤマト運輸の防衛部隊に甚大な被害が出るとともに何度か荷物を失う事態に至り、ヤマトはヤカシマの行為を悪質な営業妨害として企業法廷に対して提訴を行った。 喚問前に、最重要の資料があると思われた関西支社にヤカシマが襲撃部隊を送り込みヤマト運輸は多大な損害を出した。 しかし、結果的にデータは死守され企業法廷ではヤマト運輸の要求がほぼ認められる形を取った。 この事件による他メガコーポとの実戦経験と多額の賠償金によりヤマト運輸は更なる躍進を遂げたと考えられている。 |