シャドウランとアースドーン


シャドウランとアースドーンは共通の世界観を持っています。
シャドウランが2050年以降の未来の地球を主な舞台としており、アースドーンはだいたい紀元前5000年頃の地球(より正確に言うなら地中海の北の地域)を主な舞台としております。
このあたりの詳細とマヤ暦との関わりに関してはヤヌス御大が訳出されているので私はもう少し生臭い話を中心にこの関わり方と具体的な実例を拾っていきたいと考えています。

アースドーンもシャドウランも元々はアメリカのFASA社により製作販売されていたゲームです。
日本では他にもバトルテックのメーカーとして有名かと思います。
このラインナップからもわかるとおりどちらかというとSF寄りのメーカーでした。
そのような背景のFASA社から出たこともありアースドーンもどこかSF的テイストのあるゲームでした。

アースドーンはルーンクエストの重厚な世界観とDDの簡単なルールをうたい文句に作られ、この二強を仮想的とした意欲的なシステムでした。
当然メーカーも良いものを作れば売れると考える程おめでたくはありません(多分)
その販促策の1つがシャドウランとのクロスオーバーだと推測されます。(事実かは不明です)
このクロスオーバーには大きく2つのアプローチがありました。
それはキャラクターの共有とイベントの共有です。
アースドーンとシャドウランでは共通のキャラクターが登場します。
それは強力な魔法により魔力の枯渇する第五世界を飛び越えたドラゴンとイモータルエルフ達です。
その多くはちょっとしたお遊びレベルですが両方の作品で重要な位置を占めた存在がいます。
それはグレートドラゴンであるダンケルザーン、あるいはマウンテンシャドウと呼ばれる存在です。
そうアメリカ大統領となり爆死を遂げた人物です。
彼はキーキャラクターとして2つめのイベントの共有においても重要な役割を果たします。

> 話を少し戻してイベントの共有を見てみましょう。こちらはもう少しシンプルなものです。
シャドウラン世界で魔力の増加に伴い発生した事件はアースドーン世界でも発生する。
あるいはアースドーン時代の事件が原因だったり、その経験を踏まえた対策をたてていると言うものです。
具体的にはシャドウランの昆虫精霊はインヴェとしてアースドーンのサブプロットとして提供されます。
アースドーンのメインシナリオラインに絡む一連のドラゴンの娘キャンペーンはシャドウランのドレイク誕生秘話です。少しだけデンバーの精霊ゼブリンも関係してますが。
このあたりはあくまでも一方のメインプロットをサブプロットに取り込んだり、付帯的情報を提供するものです。
このために一方だけを見ると非常に半端な情報に見えます。

一方先程のダンケルザーンを主軸にした大災厄阻止キャンペーン(命名:私)がシャドウラン2nd時代にありました。
世界の魔力が一定値を越えると死と破壊のメタプレーンと世界的に接続されそこからホラーと呼ばれる悪魔とも邪神とも呼べる存在が大挙して押し寄せます。
これをアースドーンでは大災厄と呼んでいました。
これは魔力が増大されることにより世界のアストラルの境界面が広がり異世界のアストラル境界面と接触することにより起こる現象のようです。
この周期はおおよそ5000年周期であり、通常は覚醒から2500年程度で大災厄が発生します。
ところが、覚醒から50年程度でホラーが襲来してきています。
これはホラーがネイティブアメリカンの天才シャーマン、ダニエル・ハウリングコヨーテにホラーが伝えた大規模な鮮血儀式グレートゴーストダンスにより急速な魔力の増大が起きたことが原因のようです。

このホラーの襲来にいち早く気がついたのは地球の精霊、かつてはパッションと呼ばれた神々でした。
彼らは古代から生き続けるイモータルエルフハーレクインにホラーの襲来を阻止するよう力を持つ古代の女王の救出を依頼します(ハーレクインバック/Harlequin's buck)。
そして、古代の女王チャイラを救出したハーレクインは盟友ダンケルザーンへと大災厄到来が近いことを相談します。
相談を受けたダンケルザーンは急遽早い大災厄を引き起こすためにホラーたちが建造する異世界からのブリッジを破壊するためのアーティファクトドラゴンズハートを製作します。
ところが彼が本格的な対応をするために爆殺されてしまい配下のメンバーがダンケルザーンの遺志を継ぎ大災厄の阻止に走り回ります。
これにより早すぎる大災厄の到来は阻止されました。
このラストエピソードはドラゴンハート三部作(『(Stranger Souls』『Clockwork Asylum』『Beyond the Pale』)と呼ばれる小説で語られます。
このようなプロットが他にもしこまれていたかもしれませんが、それは永遠に明らかになることはありませんでした。
2000年頃出版社のFASAが倒産したのです。

アースドーン初期プロットの第二次セラ戦争の末期、シャドウランは第三版が出た直後でした。
シャドウランのライセンスはシャドウラン2ndのメインデザイナーであるジョーダンKワイズマンの立ち上げた企業ウイズキッズに移管されます。
一方アースドーンは開発スタッフとともリビングルームゲームズに移管されます。
この製作会社が別れたことにより以前のような緊密な連携は難しいと言う理由(そして恐らく権利関係)によりこれ以降アースドーンとシャドウランのクロスオーバーは行わないとアナウンスされます。
ただ、これはクロスオーバーをなかったことにすると言うわけではなく、前述の大災厄阻止キャンペーンのような大掛かりな仕掛けはしないということのようです。
そもそもアースドーンもシャドウランもサプリメントはその世界の誰かが書いた体裁なので多少の妄言は許されるのです。
このために詳しい説明はないもののクロスオーバーは依然としてあります。
例えば、アースドーン側で竜冥と嵐の確執に関する話やシャドウラン側でアースドーンのホラーをアストラル裂溝から召喚したという話題があります。
もともとシャドウランのサプリでシャドウスピリットと呼ばれている存在はアースドーンのホラーらしいです。
余談ですが、アストラル裂溝は魔力の濃度が高いマナラインの交点などで安定するとあるのでこれが世界的に発生するのが大災厄ではないかと思われます。
ちなみにサイバーマンシーやシェディムなどもホラー関係の話題でした。

そう言えばこの作業の際に版権保持者を軽く見たのですが一貫して旧FASAの人間が関わっており安定しているシャドウランと版権の移り変わりがばたついているアースドーンの明暗が何とも言えませんでした。
シャドウランはFASA→ウイズキッズ(シャドウラン2ndのメインデザイナーが起こした会社)となります。
しかしウイズキッズはメイジナイトなどのミニチュアゲームをメインとしておりTRPGは当時ドイツでのシャドウランを販売していたFANPROに委託します。
開発スタッフはそのまま引き継がれているようです。
その後シャドウランの小説の出版権を持っていた企業にTRPGの販売権は移管され、その際にTRPG製作会社としてカタリストゲームラボスが設立されます。
しかし、ウイズキッズがトッポに買収された際に出版権の契約に手間取り一時シャドウランの展開が停止します。
ちなみに日本語版の展開がストップしたのも同じ理由です。
その後同様の事態を嫌ったカタリストゲームラボスはシャドウランの販売権を買い取ります。
このまま現在のシャドウランラインに繋がります。
メンバーの世代交代はありますが基本的に一貫した開発スタッフとなります。
反面アースドーンはどうでしょうか。
従来のアースドーンの出版権はニュージーランドの半同人ゲームメーカーレッドブリックが手に入れます。
そして、従来のアースドーン開発スタッフはリビングルームゲームズに移り2ndの製作を進めます。
しかし、リビングルームゲームズはアースドーンから撤退し全てがレッドブリックに移り3rdが発売されます。
このレッドブリックもメンバーが抜けて解散。
メインデザイナーが単身アメリカに渡りFASAの社名を購入しFASAとしてアースドーン4版を発売しました。
これもキックスターターで資金を集め、発売日は延期を繰り返すと言うと状況でもわかりますが、スタッフが足りているとはとてもいえません。
これを見るとウイズキッズはFASAの稼ぎ頭のシャドウランとバトルテックだけを持ち出したと言えるかもしれません。
そして、不採算で切り捨てたアースドーンのためにリソースを割く必要はないとしてクロスオーバーをやめたと言うのが真相ではないでしょうか。

まあクロスオーバーは好き嫌いはありますが私は大好物なのでガンガンやっていきますが。
とりあえず買ったクロスオーバーシナリオやらないといけませんね。
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