シャドウラン5thセッションログ:廃棄兵団

例会のGMをやってきました。今回は初心者向け…ということで基本的にシンプルなシナリオで面倒なルールを使わず、そのかわりに可能な限り弱いキャラでできる限り緊迫感のある戦闘というテーマでした。


ただし参加者は全員経験者・元参加者だったので本当の初心者は一人もおられなかったわけですが。


PC1:ハンス (ドワーフ・ボディガード)
回避できなくとも体で受ける、頑強な盾役。アーマーの厚さが過酷な環境で光る。

PC2:ガラフ (ドワーフ・ミスティックアデプト)
今回MVP? 多芸多彩なメイジ。大変有能だがリアルラックに恵まれず精霊には嫌われている模様…

PC3:静(エルフ、サムライ)
いつもの。今回はモノフィラメントウィップ無しなので苦戦…

PC4:戸次
エッジ8の元警官。連続参加ボーナスでついにSINレスに。(10点カルマで国家SINのネガティブを買い戻した扱い)
依頼はいつものトール・トロール・ダイニングから。
依頼人はフィニガン系マフィアのマリオ・アンドレッティ、内容は南米から運ばれる予定の吸うと幸せになる健康に悪いパウダー…いわゆるドラッグ密輸の護衛です。

話によると最近タコマでは正体不明の勢力による犯罪組織への襲撃が相次いでいるとか。
大してサイバー化はされておらず、武器が取り立てて強力なわけでもないが、軍隊の精鋭もかくやという組織だった動きでいくつもの勢力が壊滅している。
最近被害にあった小規模ギャングは、『拠点が壊滅したが血はほとんど流れておらず全員連れ去られたのか無人のビルだけが残された。金目のものもほとんどそのまま』という奇怪な状況。

何もなければ2000新円、何かあったら倍払うという話で一晩だけで稼げるなら楽でいいよなーと受けるチーム一行。時間は明日。

FNパシフィックというマフィアのペーパーカンパニーが所有する波止場に夜間に集合。ちなみにこのへんの場所は、ナイトエラントではなく昔ながらのローンスターと契約している。
昔ながらの()おつきあいで色々と見逃してもらっているという話である。大抵のことは無視してもらえるが、さすがに銃撃戦になると出張ってくる。

昼間の間に事情を調べてみると、前述の話に加えてマフィアがランナーをわざわざ雇うのは、「自前で大兵力を揃えると戦争準備と取られかねない」からということ。
周囲もギャングやヤクザといった後ろ暗い連中の多い場所である。ビジネスという関係上仕方ないところ。

夜になりドラッグを運んできた小型の貨物船が着岸。それなりに大きな荷物に満載された麻薬が荷降ろしされる。すぐ隣にある倉庫の中で現物確認…なのだが、ガラフと静が空を飛ぶ奇妙な音に気づく。回転翼ドローンの駆動音だ。

襲撃を予想して倉庫の外に出ると、果たして10人以上の特徴のない格好をした兵士に侵入されている。マリオの連絡に外の舎弟は答えない。
戦闘開始し銃を構えて前に出ようとするPCたち…だが、GMが書き出した地図の前に阻まれる。

ハンス「お、俺の移動力…4m(歩行)!?」

かなり広々とした港湾地区のため、まともに交戦できる場所まで移動することそのものに時間が取られるのである。
必死で走って壁までたどり着くハンスと戸次だが、その間に敵勢力からグレネードが放り込まれる。
すわ炸裂か!?とビビるPCたちだが破裂はせず、代わりに激しく煙を吹き出しPCがいる付近を覆ってしまう。煙による視界修正(-6)が発生。

熱知覚があれば1段階緩和されるという設定だが、静と生得のガラフ以外もっていなかったため優秀なはずの射撃を生かせない。
そしてなぜか敵側にはほとんど修正が入らない…。

その間には12というごく普通?のイニシアチブで動いた敵側からは猛烈な射撃が加わる。一番突出した戸次に大してディファイアンスT-250(ショットガン)によるセミオートバースト、さらにはイングラム・スマートガンXによるフルオートの連射。回避が-5や−6や−7といった数字になるため悲鳴を上げながらすごい勢いで削れるエッジ。

ハンスにもフルオート射撃が当たるが鎧は通らず体で受ける。静は全力防御で回避。

結局1ターンの間全力防御を含めてイニシアチブとエッジが削られ続けた結果、反対側のマフィア側が交戦していた戦線が崩壊しかけたため、ガラフが後詰で呼び出していた精霊を投入。マフィア側はそれで助かり、不利と判断した襲撃者たちは粛々と撤退していく。

2体の死体が残されたが、その死体を検分しようと近づいた途端に、死体の頭がはじけ飛ぶ。
頭蓋爆弾がしかけられていたのだ…

ドラッグの取引に介入するにはあまりに意味不明な状況。10分ほどで駆けつけた「馴染みの」ローンスターの刑事は渋い顔をしながら死体の引取を提案する。(ついでにPCたちにSINレスを見逃す賄賂を要求することも忘れない)

「これ以上この界隈で騒動を起こされたら困るんだよ。滅多に証拠を残さない連中の貴重なブツだ、調べさせてくれや」

そして二日後。フォートルイスのバー「ロスト・ユニコーン」に呼び出されたチームメンバーは、ローンスターの刑事ゴードンから、とある廃病院の調査を依頼される。

ローンスターも独自に謎の攻性集団の捜査を行っており、ある程度は正体を掴んでいた。

まず兵団の構成員のほとんどは新品のサイバーウェアを使っていない中古のライトサイバーであること。
サイバーウェアも「サイバーアイ」「スキルワイヤ」「チップジャック」といったごく一般的なもののみが埋め込まれていること。

※チップジャック:ChromeFresh収録。特定の知識スキルを安価に得る。ただし変更は出来ない。

チップジャックには小隊戦術の知識ソフトがインストールされていた。そして大なり小なりその他のサイバーはあるが、「超人兵士を作る」のではなく「工業製品のように画一化された兵士を作る」ことに集約されている。

彼らは見境なく犯罪組織を襲っているようではあるが、旗色が悪くなると即座に撤退する。また負傷者や戦死者の死体は全て輸送用ドローンを用い回収していく。無力化した相手も同様に…
刑事ゴードンは、これほど大量の中古サイバーウェアをリサイクルでもするがごとく調達し運用する組織として、臓器密売組織(オーガンレッガー)タマナスの関与を疑っていた。

そしてスラムへ潜入捜査を行った捜査員の一人が失踪する。もはや命はないものと思われるが、彼が残したステルスタグは例の廃病院を指し示していた。

「いつタグの存在に気づかれるかも分からん。気づかれた時点で潰されるだろうし、最悪は拠点を引き払われて手がかりが尽きる場合もある。可能な限り早く潜入を行ってくれ」

 前金で5000。有望な手がかりには追加で5000という破格の報酬に頷く一行だが、問題は現在のチームにはデッカーがいない。

 先日の銃撃戦でもドローンやおそらくマトリックスからの監視が行われたことを推測し、決行の直前にハンスは馴染みのフィクサーに依頼し腕利きのデッカーを探してもらう。

 現れたデッカーの名前はラッキーマウス。目にモザイクのかかった怪しい黒鼠のペルソナは、報酬全体の20%を要求。それを受け入れたチームは現地調査と情報収集に走る。

 戸次が先だって訪れた廃病院は、6mに及ぶ高い壁に覆われ、雑な有線カメラで監視されていた。
周囲の浮浪者たちに状況を尋ねても、「化物が出る」「入った奴は誰も出てこない」「一週間に一度、冷凍トラックが中に入って何かをおろしているようだ」と曖昧な答えばかり。
前回の戦闘の反省として、全員が所有していなかった熱視覚のマルチ機能ゴーグルを買い求め、一行は夜の廃病院へと向かう。

 広々とした敷地は低いフェンスで覆われている。雑に配置された監視カメラを掻い潜り、壁に囲まれた病院へと進むが、入り口の大きな扉は鉄のごつい閂で閉められている。マグロック?ねえょそんなもん。

 破壊するのも目立つ上に一苦労すると考え、裏のほうから登ろうとするが

「で、誰が《登攀》するの?」とGMより

 射撃戦重視でビルドすると大抵筋力って無視されるんですよね…(笑)

 幸いミスティックアデプトのガラフがレビテートの呪文を賢明にも記憶していたため、多重維持による盛大なマイナスに耐えながら4人まとめて壁の向こうへ。

 無事に着地した一行へ「じゃ、《隠密》テストね」と新たな試練。

 せっかく呼び出したフォース5の人の精霊の助力1回が《隠蔽》パワー発動で消える。それでもスキルの低いガラフとハンスは隠蔽ありですら隠密対抗(犬は知覚:嗅覚で判定)に敗北。敷地に放された軍用犬の牙が迫る。
さすがにただルール通りに走ると必ず追いつかれるので優しいGMは

「《ランニング》テストに成功したら逃げ切ったと判断していいよ」

 と伝えたが残念ながら誰もそんなスキルは持っていない。ハンスに至ってはクリティカルグリッチする有様。
 仕方なく束縛していたレーティング3の精霊を解き放ち犬と戦わせている間に病院の中へ。徐々に準備したリソースが減っていく…。

 病院のロビーは完全な真っ暗闇。電灯の一つも生き残っていない。理由は後述。
 床は最近大人数が出入りした足跡、ほか頻繁に使われたらしい業務用エレベーターと上下に伸びる階段。
 特に家探ししたが古ぼけたボロボロの機材以外は何も見つからず、地下へ進むチーム。

 分厚い鉄の扉で施錠された地下は、巨大な冷凍庫が立ち並ぶスペースになっていた。霊視したガラフはあまりに歪んだアストラルにめまいを起こす。かなり悲惨で残酷な何かが常時行われた形跡を感じる。
生き物の気配もないまま真っ暗闇の中を熱視覚で進み、電源だけは入っているらしいフリーザーの中を開けると…

GM「冷静度チェック。難易度4ね」

 内部はバラバラに刻まれ保存された「かつて人間だったもの」の塊だった。
 中古のサイバーウェアやバイオウェア、あるいは肉そのものが大量に保管されている。よくよく見ると作業机の上には齧られた痕跡がある骨なども…

 冷静チェックに失敗した静とガラフが吐き気をこらえつつ証拠写真を撮影。
「中古サイバーが山盛りあるけど持ってく?」と聞いたGMにはさすがに全力ノーの回答だった。

 三階建ての建物の二階は病棟だったらしい。現在は無人だが、赤茶色いインクで走り書きされたカルテのメモなどが残されている。そしておそらくメモに使われたインクには血液が入っている可能性が…

 ここで少々タマナスについて解説すると、彼らの構成員の多くはグールである。HMHVV-Ⅲに感染した彼らは人間の生肉しか受け付けない体となり、また視覚を喪失してしまう。(霊視は可能なので目は見えるといえば見えるのだが)
 この真っ暗闇の中でもグールであれば困らないし、霊視メインなら強烈な恐怖などが染み付いた血液であれば読める、と今回の卓での判断。

 巡回していた小型の地上機ドローンは先行した静がサイレンサーつきのプレデターVで排除。問題の3階へと進む。
たどり着いた三階も同じく真っ暗闇。長い廊下に点々と配置されたドア、そして階段を登りきりドアを調べようと進んだ途端に、闇の中から咆哮とともに獣らしき四足が駆け寄ってくる。
 さらにデッカーからは「おい、何かターゲットされてるぞ!ちょっと解除するまで耐えろ!」と警告。
 奥の扉からは敵兵らしき姿も見え、焦った静は犬の牙をギリギリで回避しながらオートピッキングツールで扉をあけようとするが、襲いかかってきた犬をさばききれず開けた扉から中へともつれて倒れ込む。(犬による組み付き)

 敵兵4人及びカミカゼを投与され牙をバイオウェアで大型化した闘犬とのバトル開始。

 必死で静を救おうと走る残り3人だが、「階段15mね」の無常な一言で一歩出遅れる。体格は一般的なエルフ女子な静は敏捷力こそ人外だが直接戦闘力は一般的で、カミカゼで理性がぶっ飛んだ犬に絡まれ得意の拳銃も照準が定まらない。
 周囲は完全な暗闇のため、熱視覚ゴーグルでも修正は-3である。さらに全力走行の上に長い廊下の先ときて専門化:ヘビーピストルの射程不足が露呈する。
 猛烈な射撃を全力防御で耐えるために、3人ともが3D6あるはずの高いイニシアチブを生かせない。エッジ8だった戸次も激戦で消耗し残りエッジはわずか。
 しかもショットガンは範囲射撃のため一発食らうだけで複数人が回避する必要があり、さらにサブマシンガンからフルオートの一斉射撃。
 悲鳴を上げながらほぼ撃たれっぱなしの一行、2ターン目直前でようやくガラフの幻影デバフが敵兵士に炸裂。最大-5の強力なマイナスDPを与える。
 だが次のターンでも劣勢は変わらず。暗黒の中で距離が離れすぎ、人外級のDPをもってしてもマイナスが大きすぎで決定打を与えられない。
流れを変えたのはやはりガラフ、酸噴射の間接攻撃呪文(無謀行使)二連発がカミカゼドッグをついに仕留める。開放された静がようやくプレデターの狙いすました一撃で兵士の一人を仕留め、ついで戸次が2人目を倒して勝負あり。

 残りは流れで倒せそうなのでGMは終了を宣言しました。

 問題の資料らしきものは一番奥のふるぼけたコンピュータの中に。一応持っていける程度のデスクトップだったため、えっちらおっちら担いで逃げる。
 追手はかからないが、気になったのはディスプレイに表示された「コングラッチュレーション!」の嫌味とも取れるメッセージだった。

 逃げ出した一行が振り返った時、病院は突然轟音を立てて崩れ落ちた。おそらく職人芸とも言える精度で爆弾が仕掛けられていたのであろう。
 残る証拠は全てガレキの下に。

 コンピュータを丸ごとローンスターの刑事ゴードンに預けたチームに、後日入った連絡は
「あのさー、お前ら、これ要る?何ならプレゼントするよ?」

 という意外な言葉。
 プロジェクト:ディスポーザルズというタマナスの計画は、来たるべき大規模な戦闘のために、可能な限り安価で効率よく兵隊を「生産」する方法だった。
一人ひとりが弱くとも優秀なリーダーが指揮することで驚くべき戦闘力を発揮させる。死んだ肉とサイバーは食料及び新たな兵隊へと再利用。彼らはその戦術と兵站構築を実地で検証し続けていたのだ。
 さらに中に入っていた「来たるべき戦い」は驚くべきもの。とあるランナーチームがアレスの秘密施設で遭遇したという「昆虫精霊の軍事利用研究(5版冒頭小説参照!)」。そしてプロジェクトパイロ、ボトルネックといった怪しげな昆虫精霊絡みの情報であった。
 そのまま公開すれば大スキャンダルにもなりかねない情報が、暗号化もされない状態で保存されている。
「俺シラネー。お前らどうする?」
 そう訊かれた一行も、黙って何も聞かなかったことにして首を振った…

 というところでシナリオ終了。
 最後はつい先日行ったアレス=昆虫精霊シナリオに接続するもので、今回の参加者の一部もそこにいましたので、言ってみればボーナスみたいなもんですね。
予想外にカミカゼドッグは活躍してくれました。数値はそのままコアルールのものですが、ガッツリ反応・筋力が上がって苦痛耐性がつく、さらにはクロームフレッシュで追加された牙(500NY)により9P/-3 のダメージ性能なので噛みつかれたらタダではすみません。さらに俊足で組み付きされると白兵戦を軽視しているキャラだと最悪脱出不能で無力化されかねないでしょう。

 他は多少卑怯とは思いつつもキルコードの追加マトリックスアクション「tag(タグつけ)」を使用。リーダーがマトリックスから行使したという設定で、「遮蔽・視界修正を2点まで無視」「狙いをつけるをフリーアクションで1回使える」と大変強力。しかもコムリンクで使える。
 これと《統率》によるDPブーストにより、わずかDP8(+2スマートリンク)のモブがサイバーウェアをガン積みのサムライさえ恐れる戦力になったという落ちでございました。

 ただし重傷を負ったのはガラフだけ、しかも過剰行使によるものなので普通に肉体戦闘で受けたダメージは戸次の精神-3(軽傷)までだったということで、割とゲームバランスとしては「怖がらせつつ殺さない」バランスは取れたのではないでしょうか…。
 
 ひたすらドンパチしてたシナリオでしたが楽しかったです。
「ゴブリンスレイヤーみたいですね…」とは参加者の談。確かに。
ちなみにですが、俺設定でこの廃棄兵団計画はHARD TARGET/KILL CODEのタイムラインをもって完成します。ネメシス・スタンスタッフ
(両手持ちのスタン杖)をハードターゲット収録の過剰出力モードに改造することで、AP-5を活かした対精霊武器として使うものです。過剰出力の改造でダメージはSからP(肉体)へと変更されるので、弱い精霊ならそのまま殴り倒せるようになる(かもしれない)わけですね。
高いAPDSや重火器やモノフィラメントウィップや魔法や武器収束具や色々? まぁ確かにそうなのですが、計画そのものが「激安調達の最大戦力」になるのでこれでいいのです…多分。
トップページに戻る