夜来たる

例会のGMをやってきました。今回は全員が経験者かつ全員が未訳に手を出しているという、最初の世界観説明が全く不要なおそらく日本でもトップレベルに濃い面子が集まったのではと思われます。
ルールもストリートグリモアからフォービドゥンアルカナ、ランファスター等翻訳されるのがいつになるんだというデータが目白押し。GM側も腕の鳴る展開となりました。


PC1:アンセシーカー(ヒューマン)
東京より参戦のシャドウランのスポークスマンのてらだ様。関西へようこそ!
若き記憶喪失のテクノマンサー、強靭1筋力1という超ガリヒョロにもかかわらず割と色々大変でした。

PC2:ウツロ(ヒューマン)
参加三回目の帝国出身おまわりさん。リボルバーの技量が冴える。

PC3:チャールズ(ヒューマン)
参加2回目の蜥蜴なお方。中年オカルトアル中探偵で錬金術の達人をプレイ…だったのだが、こちらもドタバタな展開に。

PC4:ショウヨウ(ピクシー)
近接専門のピクシー・ベアハンドフィジカルアデプトという超色物。ただし火力はチーム最高、気合の入ったおチビさん。

PC5:マラキ(トロール)
マフィアと繋がりのある用心棒。腕力を生かして色々と壊す。


◆導入
「2076年6月3日。これといった特別な事件もない、極普通の朝だ。
 ホライズンのグローバルニュースは今日も世界のどこかしらで起きている悲劇について騒ぎ立て、アナウンサーは空々しい同情を口から漏らし、そして言葉だけで何もしない。
 退屈なトリデオを眺めながらあくびをした時、コムリンクからのコールが鳴った。
 表示されたのは先日知り合った自称自警団、通称ギャングのスクラーチャ構成員、ガーニィというガラの悪いドワーフだった。」

 マラキのコムリンクにコールを入れたのは、知り合いのギャングのメンバーのガーニィ・ロックヘッド。なんでも彼が加わっているスクラーチャ(アンダーグラウンドの自警団を元にするギャング団)からの依頼だという。

「すぐ終わるおいしい仕事」に毎月2万新円が生活で飛んでいくマラキは二つ返事で仲間を揃えて指定のレストランへ。旧レンラクアーコロジー、現在はACHEと呼ばれる巨大なアーコロジーのすぐ北にあるオーク・トロール料理で有名なレストランである。

 中に入ると長いカウンターとドカンと置かれる巨大なジョッキ、壁には有名なトロッグたちの記念写真とサイン。そして既に出来上がっているモヒカンドワーフ。オレンジ色の巨大なモヒカンを誇示するマッチョドワーフは、チームに料理をまとめて奢ると今回の依頼について話を始める。

 現在オークアンダーグラウンドは、比較的改善した治安のため観光名所として人気を集めている。スクラーチャたちが護衛をつとめ、短期の保険をかけた上で探検ツアーを開催しているのだ。
 そのアンダーグラウンドで、最近浮浪者が襲われる事件が起きた。現地は野犬がめちゃくちゃに噛みちぎったような凄惨な有様で、住人は怯えているし万一観光客が襲われるようなことがあれば商売にも影響が出かねない。
 クリッターならクリッターで専門の業者を雇うのだが、万一グールあたりがうろついているならハンターには荷が重い。
 今日の夜までに少なくとも状況の把握と、できれば原因の捕獲もしくは殺処分をして欲しいというものだった。

 依頼こそ1000NYと安いが、デビルラット10NY、デーモンラット300NY、グールなら1000NY、特殊なものはそれ以上とまず交戦が予定されるものとしてはそこそこの報酬。
ついでに移動する手間も不要(アンダーグラウンドへの入り口は店の中にある!)というわけで、PCたちのチームはそのままダンジョンアタックと相成った。

移動は東へ30分ほど、浮浪者たちがうろつく雑然としたスラムが事件現場だ。どうやら獣に押し入られたらしいそのテントの中は酷い有様で、獣の糞尿と腐った肉の臭い、そして強酸に焦げた後と何が起きたのか理解しがたい。

たまたま覚醒生物学を憶えていた(資質:無教育なのに!)ショウヨウは、現場を襲ったのがおそらくデーモンラットの群れであることに気づく。たまにデーモンラットには突然変異で酸の唾を吐くもの、あるいは電撃を放つものが生まれるのだ。(ピカチュウかよ、と卓の参加者からツッコミが入る。そのとおりだ)

ガーニィに連絡すると、地下には頼れるハンターがいるからそいつに話を訊けという。スナグ・ティース(乱杭歯)というあだ名のグールは、死んだ場合の死体提供と引き換えに地下をうろつく昆虫精霊やグールを狩る同族殺しのハンターだった。

通信がほとんど通じない地下で、無線ビーコンの周波数を知らされた一行は暗闇の地下道でハズマットスーツを着た異様な人形と接触する。ガスマスクに装甲対化学服という一切肌を露出させない風体のスナグは、情報提供と引き換えに

「妙な迷い人」

の引取を一行に依頼した。これについては後述。
別によく分からんがめんどくさくないなら、と了承したチームのコムリンクに届くのは、かつて使われていたモールス信号による救援依頼。アンセシーカーは技術を齧ったものとしてたまたま憶えており、すわ一大事と走って道を戻る。
果たしてスラム街の一角は、負傷し固まって怯える浮浪者たちとそれを取り囲む大型犬ほどの鼠の群れという状況だった。

デーモンラット自体はそれほど脅威はないのだが(なにせ鎧なんて着ていない)、彼らが覚醒した亜種の酸の唾、さらには電撃は極めて厄介だった。
屋上から飛び降りるように駆け下りたラットが近接能力に欠けるチャールズ、そしてアンセシーカーに襲いかかる。
マラキとウツロの攻撃は無防備な鼠を仕留めるものの、強酸を浴びたアンセシーカーは負傷。さらにはチャールズが放ったライトニングボルトの呪文はデーモンラットを狙ったはずが見事にかわされ、なんとアンセ−シーカーに命中しかけ。

##今度の卓はメレーキャラが多いので、フレンドリーファイアのルールをハウスで入れています。射線が通っているところに射撃して敵に避けられた場合、味方に当たる可能性があるというもの。
ちょい致命的な部分もあると思うのでなかなかそのまま導入は厳しいかなと思いましたが、それなりに戦闘に幅は出せたかなと思います。今度はもうちょっとプレイヤーに優しい運用に考えよう##

悲鳴をあげてエッジで避けるアンセシーカー。さらには戦闘中に空中に突然現れた精霊から集団混乱が放たれる。そう言えばスナグ・ティースが「よそ者が入り込んだ疑いがある」と言ってたね。

実はグールのシャーマンが餌を求めて入り込んでいたというものだが、予想外にPCたちが腕利きだったため、精霊のパワー(生得呪文)でビビらせてその隙に食料となる死体を奪って逃げるはず…ではあったが、一人先行して範囲から逃れていたウツロが見事な拳銃の腕前でグールを撃ち抜いて戦闘終了。


で、問題となったのは戦闘後にスナグから押し付けられた迷い人。しばらく前にアンダーグラウンドに入り込んでから、大金で地下の一角を借り切り、「1週間後に俺が俺でなくなっていたら殺してくれ」と言い残して籠城したとか。
勝手に死んで肉だけ残してくれるなら問題はないのだが、どう見ても企業人な迷い人、下手に警察沙汰になるとスナグの命も危ない。面倒事など御免だ、さっさと地上に連れて行ってくれと鍵のかかった扉をあけると、奥には弱りきった白人の男が。

名前はノーマン・ブラット…らしい、が起き上がった男は「アルマン・ブラッド」と名乗った。

「めんどくせえ依頼通り殺しちまうか」とブツクサ言う物騒なマラキだが、ノーマンが電源を切ったまま後生大事にかかえていたコムリンク、それをアルマンと名乗る男は地上へ持っていってある人物に渡してほしいという。
アルマンいわく「友人の遺言として受け取ったものだ。騎士として使命は果たしたい」

はぁ?といろいろ事情を聞いたり検索してみたり。
ノーマンはボストンにあるマサチューセッツ魔法工科大学を卒業し、ネオネットの研究者として就職した割とエリート街道の俸給奴隷。それが身分を表すものをすべて焼き捨ててなぜシアトルにいる?
さらにはアルマンときたらバーセイブという架空世界を舞台にした「エイジ・オブ・レジェンド」というネット没入型MMORPGの有名キャラクターの名前だとか。ガチゲーマーだったノーマンのゲーム中のキャラらしい?

どうもノーマンはCognitive Flagmentation Disorder、最近ストリートにも名前が広まってきたナノウィルス由来のCFDに感染し、AIに脳を乗っ取られた状態になっている模様だった。ただしアルマンはAIとゲームキャラが融合する形で脳の中に居座り、ノーマンから「体を譲られた」形になっているのだ…とか。
彼からすると「スロール王国の騎士として邪悪なセラ帝国の魔獣たちと戦い勝ち残ったのだ」らしいが、はいはい頑張ってねという戯言にしか聞こえない。

のだが、プレイヤーの中には元ネタが判る方が複数おられたので大ウケしておりましたとさ。(バーセイブはシャドウランとも関係のあるアースドーンの舞台)

ただし胡散臭いことに、ノーマン=アルマンが籠城していたのは明らかに電波から遮断され、全く通信できない部屋。そして伝えられた「渡して欲しい相手」はマイルズ・レニアー。
ネオネットの子会社、ノヴァテックセキュリティのCEOにしてネオネット重役。そしてかつてのコーポレート戦争の数々に携わったビッグネームだ。

どーすんだよ、「レーニア=サン、お届け物です」って届けんのかよ、と悩むものの、とりあえず中を見てみようぜとアンセシーカーがハッキングしアクセス。設置されていたデータ爆弾も無事解除、中から出てきたデータはといえば、彼が所属していたネオネットの研究施設の研究者が、どうも世界規模で指名手配されているテロリストと関係があったという内容だった。

マイルズ・レニアーの連絡先、そしてドクター・ペネロペ、そのペネロペ女史の通信記録。どうも彼女は国際指名手配中のテロリスト集団、ウィンターナイトと連絡を取り合いシアトルでテロを起こそうとしていた模様だ。
で、既にロックダウンやストールンソウルといった未訳サプリを読んでた人が多い卓なので、この時点でドクターは世界最悪の電脳テロリストであるパックスと同一人物であることはミエミエだった。名前を見た瞬間「ああやべぇのが出てきた」とマラキのプレイヤーは悟ってましたね、はい。

ボストンから持ち出されたものはハードナナイトが入った保存ケース複数と、明日の17時30分という予定が書かれた計画書、そしてベルビューのワシントン湖畔に建設された揚水場の地図。
ウォーターポンプにCFDに感染したナナイトがばらまかれると恐ろしいことになる。一行はどうやって身の安全を確保しつつマイルズ・レニアーにアポを取るか、悩んだ末に捨てアド入りの安いコムリンクから手に入れた情報についてレニアーのアドレスにメッセージを残すことを選んだ。

で、ここではPCたちが色々と身の安全を確保しようと頭を捻ってくれており、どれも非常に適切なものなのでGMからの意地悪は全く無かったのであるが、かわりに

「通信できる状態で電源が入ると、それぞれ別の立場でノーマンを探していたドクター・ペネロペとマイルズ・レニアーから着信が入り、さあどっちに出る?」

とレジェンド級のNPCと会話できるシーンが入る予定だった。大変残念ながらPCたちの機転により回避されたが。(笑)

連絡はすぐに帰ってくる。こちらも無理やりハッキングからメッセージを送るという手段で、翌日12時にスペース・ニードルのレストランで会いたいという話。

クリッター退治の報酬やら休憩やらを挟んで翌日。スペース・ニードルはダウンタウンの中心部かつハイソなレストランなので、それなりにしっかりした服装で出かける一行。中で「ジャケットはお預かりしますね」のウェイターに微妙な顔で応える。(苦笑)

中で待っていたのはジョンソンと護衛二人。問題のコムリンクを受け取ったジョンソンは後ろの護衛に渡すと、どうやら悪い予想が当たったシロモノだったのかボソボソと「レニアー様にお伝えしなければ」「内偵の通り」と宜しくない密談。
ただし問題はそこからだった。護衛の一人がコムリンクを調査中にこめかみから血を吹き出してぶっ倒れると、突然円盤状のスペース・ニードルの窓が一斉に開く。本来は開くものではないよ、もちろん。
そしてゆっくりと回転している部屋が突然かなりの速さで周回しだす。遠心力で吹っ飛ぶほどではないが、嫌な音をギアが立てているのは間違いない。しかも入り口/出口にはシャッターが降りる。

「ハッキングされている!?」はい、そうですね。
さらには開いた窓から現れた精霊が挨拶代わりにぶち込む高レーティングのファイアボールの呪文。
運悪く被弾したチャールズ、被弾はもちろんだが悪いことに発火まで、転げ回って悲鳴を上げる状況。反撃で投じた錬金術の混乱呪文はレジストされる。

混乱した店内、出口を確保しようとマラキは素手でシャッターをぶち抜こうとパンチ。2発で人一人が通れそうな大穴を開けるが、そこに殺到する客たちを脅迫技能で脅しつけ、順番に非常口へと誘導する。

アンセシーカーはハッキングを止めるべくスペース・ニードルのホストへ侵入。制御ペルソナに張り付いているスプライトをこちらもレジスタしたスプライトで排除し、ホストを通常の状況へと設定し直した。


大騒ぎから一度脱出して、ジョンソンを含む一行は近所の扇屋(レストラン)で最後の会談。スペース・ニードルを含むシアトルの複数の箇所で同時多発テロが発生しており、PCたちが巻き込まれたのもその一つであると思われること、さらには揚水場はシアワセの管轄になるため企業法の関連でネオネットからは今すぐ手は出せない、ただし騒ぎが起きさえすればローンスターを呼べるため(ベルビューはローンスターと未だに契約している)、とにかく一度ポンプを止めてきて欲しいという依頼だった。
ネオネットも本社から持ち出されたナナイトが感染源でベルビュー壊滅なんてのは悪夢でしかないのだ。

時間がないためPCたちもすぐに動く。ボロボロの体を何とか応急処置と呪文で直したチャールズは錬金術で呪文を固定、車で一時間ほどの場所にたどり着いたチームの前に湖と巨大な壁が立ち塞がる。

5mの壁を越えるか泳いで湖側から侵入するか。ここで浮遊の呪文を錬金術で何とか3人分確保したチャールズはお手柄、マラキがアンセシーカーを担ぎショウヨウはピクシーなのでそもそも飛んでいる、ウツロは腕に仕込んだグラップルガンで壁から、チャールズも浮遊の呪文で湖側から侵入を果たした。

内部は昼間にもかかわらず不気味に沈黙している。ドローンは正常に動いておらず、生きた人間もみかけない。千里眼で周囲を探ったチャールズは、陸上で溺死した、あるいは首の骨を折られて倒れた警備兵を確認する。

果たしてポンプ制御室に駆けつけ、マラキの怪力で扉ごとぶった切られた先に現れたのは、両腕をサイバー化したゴツいトロールと複数のテロリストたちだった。

ここで頑張ったのはひたすら「ちっこいピクシーでスデゴロで戦う」というビルドに挑んだショウヨウ。突撃して水の精霊をエレメンタルボディ(ストリートグリモア収録)で一撃で蒸発させ、フルオートの射撃を躱し、あるいは耐えながらトロールのサムライを沈めた。

アンセシーカーは制御ルームのホストの確保にマトリックス空間へ、マラキとチャールズはテロリストの無力化へ。チャールズの精霊の「恐怖」パワーは制圧射撃で景気良くライフル弾をばらまいていたテロリストを首尾よくビビらせる。

最後は数十発の銃弾が飛び交う派手な銃撃戦となりましたが、2ターン目で12Pというとんでもないダメージを叩き出すエレメンタルボディの前に、ダビデと戦ったゴリアテのようにトロールが沈み終了。サイバー戦闘で拳銃を壊されたウツロもバックアップのピストルで普通にダメージを叩き出すのはさすがでした。

ポンプは無事停止し、脱出したその後呼び出されたローンスターが揚水場へ。中からは仕掛けられていたナナイトのケースが確認されましたが、放出されることなく無事取り外されてゲーム終了。
ただしその日の晩のニュースでは…

 2076年6月4日、19時15分。
「所属不明のドラゴンがマサチューセッツ工科魔法大学の研究棟を破壊し出現、フェンウェイパーク上空を旋回しています。ドラゴンがネオネット本社に対し攻撃を開始したというレポートもありますが、ネオネットからの回答は得られていません」

 そしてドラゴンが撒き散らした奇妙な「雨」は、ボストンの住民たちを狂気へと導いた。
 MIT&Tは完全に機能停止し、ネオネットは沈黙、道路は狂乱したヘッドケースで溢れ、ついに企業連合はボストンの完全封鎖を決定する。ドラゴン・インシデント発生から24時間後のことだった。
 後世に知られる「ボストン・ロックダウン」の始まりである…。


 皆さん詳しい方だったのでかなり激しいですが楽しいセッションでした。誤射のルールはハウスでしたが、動き方に割と関係するので入れてもいいかな、ただ後ろから呪文を撃つメイジにとっては割と難しいので次はなしでいこうかと考えたりも。
 錬金術はタイミングが難しいようでチャールズはかなり苦労してましたね、スデゴロピクシーはビルドは成功だったと思います。フルオートでアサルトライフルで撃たれても普通に生存してましたし。精霊ハンターとしての役割は完全に果たせていたかと。

 次はしばらくおやすみして、ネタの蓄積に努めます。遠方からの参加の方々、ありがとうございました。
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