2070年 UCAS デトロイト アレス重工本社ビル 社長室 一人の端正な面立ちをした男性が一人社長席に腰掛け、黙考をしている。 彼の手元には子飼いのスパイである<見えざる者達>から1週間前に届いた紙の書簡が握られている。 再度読み直すことで、内容が変わればと読み直す、だが内容は変わらずただ事実として"脅威"についてつづられている。 「ケベック共和国にて異世界の醜悪なる魔法存在の召還を企てる組織を発見いたしました。彼らは<偉大なる狩人の教団>と名乗っており・・・」 その先には、教団の練度、魔法や武器の装備と腕前、政治的な影響力、召還される魔法存在の危うさが淡々とつづられている。 「現状の我々の手勢での対抗及び隠匿は不可能です。ファイヤーウォッチの動員をお願いいたします」 手紙はそう締められている。 アレス重工が誇る、ナイトエラント・ファイヤウォッチ部隊。彼らに不可能なミッションなど無いはずであった。 しかし、1週間前に派遣したジョナサン小隊とは3日前の報告以来コンタクトがとれずにいる。 しくじったのだろう。 ジョナサンは彼が手ずから育てた凄腕のコンバットハッカーだ。実力は理解している。 その彼をして、ミッションを達成できなかったのだ。 <見えざる者達>の目測が甘かったとしか思えない。 召還されるであろう存在の脅威を考えれば、核の投下を持ってしても止めるべきである。 ふと、以前彼の命令による核の投下によって壊滅したシカゴの惨状が頭によぎった。 あの時は他に選択肢がないとして、核の投下を命じた。 未だにその後の光景が頭にこびりついている。 彼は悪夢を振り払うように、頭を振り何も写さぬARディスプレイを睨み付ける。 その社長席に座る男は、プレイボーイとして名を馳せ、経済的トリックによって10大メガコーポを手中に収めたクールな企業経営者ダミアン・ナイト。 だが、今ここで瞳に怒りを宿しディスプレイをにらむ人物は椅子に納まり静かに数字をもてあそぶ男には見えなかった。 まるで死線を幾度と無くくぐり抜けた傭兵。そんな面構えをしている。 ナイトは、秘書に連絡を取り、告げる。 「私は社内規定に従って3日間の夏休みを取る。誰もコンタクトはとれないから、そのつもりでいてくれ」 そして、秘密エレベーターを使い地下の試験用機器室へと下り、一台のコムリンクを手慣れた動作で立ち上げ、状況の確認を行う。 連動するようにに、ナイトの後ろから一台のパワードスーツがせり上がる。 それは、アレス重工の全技術を投入して作成された次世代型パワードスーツのプロトタイプ「リンカーン」だ。 彼は1つ頷くとパワードスーツを装着し、一路ケベック共和国へと向かった。 ダミアン・ナイトには1つの伝説がある。 かつて世界中の電子ネットワークが電脳テロにより壊滅した際、世界中の精鋭ハッカーが集いカウンターテロチームを結成した。 彼らはエコーミラージュと呼ばれる、現在のマトリックスの基礎を築いた者達だ。 彼らは激戦の中皆戦死したと言われている。 だが、ダミアン・ナイトこそ、彼らの最後の行き残りであり、第六世界最強のハッカー、ダビッド・ギャビランでは無いかと言われている。 彼は自らの正義のために生きる鋼の意志を持つ男アイアンマンなのだ! ・・・・・・映画アイアンマンのレビューを聞いていてふと思いついたので書いてみました。 ちなみにTNは「ちょっとしたねた」の略です。 実際こんなことしたら他のメガコーポが大量の暗殺者やランナーを投入して謎のカルト教団どころじゃなくなるでしょうね(笑) 続きを書くことは金輪際無い予定です(笑) < |